Transparent RSE

                        


No.38LとMimesis 28 Evolutionを繋ぐ長さ4.5mのシングルエンド・インターコネクトケーブル。米国Transparent社のReferenceグレード品です。


ケーブルの途中にネットワークを設ける事で、積極的に特性をコントロールしようという謳い文句で有名な製品です。が、玄茶屋としては初っ端から踏み外して行きます。箱はどうでもよろしい。


このメーカーの魅力はケーブル自体にあると見ています。


たった10mm程度の直径しかない圧力成型されたジャケットの中は、非磁性コアを中心に据え、撚り線構造のOFHC無酸素銅導体を複数の束で個別に精密成型されたテフロンで被服し、強固なシールドも施し配置しています。精度の高いテルリウム銅金メッキ端子と2%銀入りハンダ、そして何より徹底した特性管理がもたらすワイド&フラットで破綻の無い落ち着いた音色、奥行き方向に深く展開する透明度の高い音場、音像のディテールの細部まで高いコントラストで描き分け、実体に確かな感触がありそうなほどのリアリティを感じさせる一音一音の精密描写は、他では得難いものです。


その特徴は、箱を持たないデジタルケーブルにおいても共通しており、箱は必ずしも大きな方向性を決定付けるのではなく、あくまで基本的な方向性に沿った補助的なものと考えるのが自然です。Transparentにおける箱の支配力は、メーカーの謳い文句や都市伝説ほど高くなく、あくまでも地味に縁の下の力持ちと考え他方が良いでしょう。音場の深みや透明度、低域方向には効いていると思います。それから、4.5mの長さをシングルエンドで引き回しても、1m物の同品と比べて一番懸念されるはずの透明感と精密描写という魅力がほとんど損なわれていないのは、箱のおかげなのかもしれません。なお、箱付きケーブルによく感じる閉塞感などはほとんど感じられません。


Transparentは、シングルエンドケーブルとバランスケーブルで同じグレードにもかかわらず相当な価格差があり、Kimberとはまた違った意味で選択の難しいメーカーです。


まず、シングルエンドとバランスのどちらが良いかと言えば、それは当然繋ぐ機器によります。ケーブルの価格差に惑わされると、そんな基本中の基本すら忘れてしまいがちになります。同グレード品のシングルエンドとバランスを比較したとして、シングルエンドを使うとトランス等余計なバランス化回路を挟んでしまうような、バランス構成前提の機器同士で試せば当然バランスが良くなりますし、XLR端子がおまけでついてる程度のシングルエンド推奨の機器に無理矢理バランスを使っても、構造上良くなるわけがありません。


ただ、シングルエンドとバランスどちらでも一長一短ある機器で、ReferenceのシングルエンドとUltraのバランスのどちらを選ぶかとなると、これは難しい。あくまでも機器構成上の合理性で判断すべきですが、Referenceクラスの品位は捨て難いものがあるのも事実です。


Transparentは価格差というより、SuperやUltra、Referenceなどグレード間で明確に差がつけられていて、Ultraのバランスケーブルの値付けが高いからといって、Referenceの音が出るわけではありません。どうもこの辺りがメーカーの戦略的な臭いがするところなのですが、実際の音の差は端子やケーブル自体によって作られ、価格差は箱の数に合わせて付加がなされているように思います。


それを確信させたのが、初代OPUSを聴いた時です。精密描写は何処へ行ったのか、ふわりと浮き立つディテールの毛羽立ちに、ふくよかで量感たっぷりな低域、はっきり言ってTransparentらしからぬ音でした。好みはそれぞれありますが、メーカーには立脚する位置というものがあるはずです。あえて良く言うとすれば、今までのTransparentの枠を超えようとした意欲的な実験作というところでしょうか。


何故、そこまで音が変わってしまったのかというと、心当たりがあります。初代のOPUSは、ぶかぶかの布製ジャケットで仕上げられていました。内部までは確かめようもありませんでしたが、マイナーチェンジ後現在のOPUSになって、他のグレードと同様のジャケットに変更されてるというのが何よりの証明ではないでしょうか。


Transparentは比較的頻繁にマイナーチェンジをしていますが、OPUSで得られた実験の成果は効率的に下位のモデルに生かされているようです。

ちょうどこのモデルも大きな変更があった時のもので、端子のスリーブやケーブル途中の箱が金属製から非金属、非磁性体になりました。基本的な音の方向性に変わりはありませんが、旧RSEの特徴である低重心で高い密度と弾力感のある音の出方からは少しアクが抜けてしまい、高性能化された印象はあるものの少々面白みには欠けるようになってしまったかもしれません。ただし、旧RSEは上流に選ぶケーブルとしてKimberの銀と鉄板の相性であったが故に、他の選択肢を困難にしてしまっていましたが、マイナーチェンジ後は選択肢の幅が広がり、どんな方向にも振りやすくなっています。

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