ガレージメーカー大国アメリカにおける怪しげケーブルメーカー代表格、ELECTRA GLIDEの上から2番目のグレードに位置付けされているモデルです。
何の冗談か、本国の定価は2,750ドル。それだけの価格であるだけのワケが何処にあるかはわかりませんが、とりあえず作りはヘンです。プラグを外した事は無いので正確な中身もわかりません。外形からわかるのは、やたら太くてブニブニと柔らかいのに中心部だけプラ版が通してあるのか、特定の間接部分以外では曲げる事が出来ません。正直、使い難い。
なぜこのツチノコもどきを買ったのかと言えば、単純に音が良かったからです。
事の起こりは、ある日今はもう無いダイナミックオーディオ・アクセサリーセンターにて、ガラスケースに横たわるツチノコを発見したところから始まります。
玄茶「・・・。ツチノコ発見!ツチノコ発見!」
店長Sさん「ちゃうちゃう」
玄茶「チャウチャウちゃうんちゃう?」
店員Iさん「チャウチャウちゃうんちゃうんちゃう?」
店長Sさん「違います。ツチノコでもチャウチャウでもありません。お客様からの委託品です」
玄茶「へぇ〜。なになに?エレクトラ・・・グライド。の、ファットマン?」
玄茶「ってあれ?H君の初オーディオの?」
店長Sさん「そうそう」
H君の初オーディオとは、当時大変賑わっていたオーディオ掲示板において、誰もがうらやむAVALONのEIDOLONを使う一人のオーディオマニアが、H君という友人のアメリカにおけるオーディオ選び顛末記を連載的に書込んでいたその題名です。
玄茶「こんなのだったんだ・・・。しかしこれは、使えるのか?ちなみにおいくらです?」
店長Sさん「○万円ですよ」
玄茶「む。ちょうどトランスポート用の電源ケーブルに考えてた予算だ。聴かせて下さいな」
店員Iさん「じゃあ、2階で比較試聴しましょうか。どれと比較します?」
玄茶「AC DESIGNのZEROと比べたいですね」
店員Iさん「了解〜。ああ、ちょうど今P-50sに差してありますね」
2002年頃当時のアクセサリーセンターでは大抵以下のようなシステムが標準で置いてありました。
CDトランスポート : Esoteric / P-50s
D/Aコンバーター : Mark Levinson / No.360L
プリアンプ : GOLDMUND / Mimesis 27 Evolution
パワーアンプ : GOLDMUND / Mimesis 28 Evolution
スピーカー : B&W / Nautilus802
玄茶「ふん。ふん。いつも通り良い音ですね。では変えてみて下さいな」
店員Iさん「らじゃ〜。・・・よっ。ほっ。・・はっ。っと。なんの。ふんぬらば!」
玄茶「うわ、使いにくそう。うははは。無理矢理な繋がりっぷりですね」
店員Iさん「ぶ。あははは!こ、これは酷い」
残念ながら画像に残してはいないのですが、そう、それはもはや機材に電源ケーブルを接続する図ではなく、コンセントに尻尾がはさまったツチノコが黒い箱に頭を突っ込みもがいているような光景でした。
玄茶「ま、とにかく聴いてみないと」
玄茶/店員Iさん「「!?」」
店員Iさん「こ、これは」
玄茶「すっごい情報量。洪水みたい」
店員Iさん「新品と中古の同価格ですけど、それを差し引いても格が違いますね」
玄茶「これ、音からすれば売値設定安過ぎですね?」
店員Iさん「そうですね〜」
玄茶「音を聴かせれば数割〜倍の価格設定でも売れそうですね?」
店員Iさん「う〜ん、確かに」
玄茶「今の時期、店の売り上げ厳しいですね?」
店員Iさん「え?そりゃまあ・・・はっ!て、てんちょ」
玄茶「よし買ったぁ!」
中古品は一期一会ですから。日本に正式な代理店も無く、見た目もアレなので持っている人自体少ないのでしょう、試聴出来る状況でファットマンを見た事はこの件以来一度もありません。なにやら偽物も多く出回ったようで、音を聴かずに買うのは大変危険な製品です。聴いて納得出来さえすれば真贋など何の問題にもなりませんが。
ファットマンの情報量の出方はJPS LabsのKaptovatorに似ています。カプトベターの独特なぬめりとした滑らかさはファットマンには無く、ひたすら情報量情報量という感じ。Fレンジの普通さも似ていて、中域重視の傾向です。聴いた感じS/Nが良くなったようなのは同じでも、Fレンジを拡大させムダをそぎ落として吸い取るMITのZ CORD AC2とは真逆の性格です。