Mark Leinson No.360L


Mark LevinsonのCD再生用D/Aコンバーター最後のモデルです。購入時の定価は980,000円。その後、1,050,000円に値上がりしました。値上げと同時期にソフトウェアのバージョンアップも行われていますので、非公式なマイナーチェンジが行われたと考えられます。この個体は、初期の不具合を徹底して直させたので、基盤ごとソフトウェアも最新バージョンとなっています。

本国定価は5,000ドル。内外価格差はかなりあると言わざるを得ません。しかし、実際に日本円で50万クラスの内外価格差の小さい評判の良いDACと聴き比べてみると、音の細部のディテールに相当な格差があり、おかしな現象ですが日本円としての値付けに納得感があります。それは単なる個人の好みの差だろうとも言い切れず、新品DACの購入目的で比較試聴をしていた人が偶々中古で入荷していたレビンソンのDACを聴いてみたら、内外価格差からすれば実質同グレードである50万のDACや日本製のDACと比べ、滑らかだが粒子が大粒でディテールが粗かったり細部は良く描くが密度感が不足したりなど、それぞれ不満に感じていたポイントを奇麗さっぱり解消してなお余裕の表現力を見せつけられ、結局新品ではなく中古品へ変更してしまったなどという現場にも遭遇した事があります。尚、アレも聴いてみれば良いのにとその人に囁いたのは、何処かの知らない玄茶さんです。


Mark Levinsonというとアンプが余りにも有名過ぎて認知されていないようですが、Mark Levinsonブランドの中でD/Aコンバーターは間違いなく名機を排出しているジャンルです。

マルチビットDAC(24bit)。誤差制度0.004ppmのクロックを搭載。参考までに、ESOTERIC G-0sは0.00005ppm、同 G-0は0.1ppmです。クロック端子はありませんが、D/A変換直前でメモリーによるジッター除去とクロックの打ち直しをしていますし、そのクロックにしても一応数値上、ルビジウムほどではないものの最新のクロック機材を考慮するのが絶対条件というほどではないレベルだと思います。


デジタルフィルターに、処理能力10Mbit/sを超えるアナログデバイス社製32bitDSP「SHARC」を搭載し、96kHz/24bitまで対応しています。DSPによるHDCDにも対応。


デジタルフィルターによる、352.8kHz/24bit or 384kHz/24bitデータへのアップコンバーション処理を内部で行っています。これは、同社のCDプレーヤーNo.390SLが発表された際に謳われた機能ですが、No.360Lにも搭載されています。最新バージョンのソフトウェアを積んだNo.360Lでは、そのコンバーションデータのディスプレイ表示が可能となっています。

プリのNo.38Lと同じ傾向の端正な音色です。プリよりもバランス良く上下ともすっきりと伸びきり、非常にワイドレンジです。音像や響きの細やかなディテールを非常によく出してくれますので、特に音の出から消え際までの滑らかなグラデーションがお見事。


正反対の音作りのDACとしては、CelloのRDACが挙げられます。某氏よりモジュールをViola製にバージョンアップした物を貸していただき、じっくり聴き比べました。芯のしっかりした立体的な音像が際立って感じられ、VRDS、RDAC、GOLDMUNDラインによる一つの方向性は、ある意味極致であると思います。


上位機種のNo.360SLは、360Lを土台に、徹底したノイズフロアの低さと低域の密度の高さを付加してきますので、少し濃厚な味付けになります。

このモデルの購入時に比較検討した際、トランスポートとの相性によってベストチョイスが変わってくると感じました。トランスポートに左右方向の音場など全体的な空間表現が得意な物を持ってくるなら、上位機種を選択するのが良いと思います。逆に、音像の密度や立体感、奥行き方向に深い音場を得意とするトランスポートの場合、No.360Lの方が好ましく感じました。純正ペアとなるNo.37Lとの組み合わせでは順当にNo.360SLの方が格上に感じましたから、同一メーカー内では相応に狙った音作りがなされているのは確かです。同社CDプレーヤーのNo.390SLは、同時比較でないとNo.37L+No.360SLとの区別が難しいくらいバランス的に似通った音がします。


このDACの傾向としては、音像描写、音場描写共コクのある表現をしてきますから、合わせるトランスポートは響きの長さや滑らかさを主張するものより、空間と音像を明確に描き分けるタイプが合うと思います。コク重視で更に深めて味わうならば上位機種のNo.360L+No.37Lペア、行き着く先はNo.30.6L+No.31.5Lでしょう。

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VRDS系トランスポートとの相性が良く、特にWadiaのVRDS系CDトランスポートとの相性が抜群。本家ESOTERICのVRDSとも大変相性は良く、人によっては上位機種との下克上が起こると感じるでしょう。


純正ペアであるNo.37Lとの組み合わせでは、かなりあっさり味になり、好みは人それぞれではあるものの、上位機種であるNo.360SLに対しての下克上現象は起こりません。


Wadia170 iTransportとの相性も悪くありません。不安定な揺らぎが無く、微細なディテールまで曖昧さの無い明晰な音像と広大な音場を描き出す方向性そのものは、No.360Lとの相性の良さを感じさせます。滑らかでコクのあるDACですから、フォーカスがピタリと合って、空間に対し明確な音像を描写するタイプのトランスポートと良く合います。Wadiaと違い、どんなトランスポートと組み合わせても非常に上質な雰囲気を出してくれる無難なDACですが、普遍的上質さの更に上を覗けた時の快感はたまりません。


使用する電源ケーブルは、このDACの良さを引き出してあげるように、ワイドレンジで空間表現の優れた物が好ましいと思い、両端を6N銀ブレードのIeGO製に取り替えたAC DESIGNのConclusion1.4 PWを使用しています。Synergistic ResearchのResolution Reference Mk2 Master Coupler X-Seriesも非常に相性が良いのでお勧めです。


インターコネクトケーブルは、まず前提として受け側のプリアンプの仕様に合わせて、バランスかアンバランスかを選択します。このDACは、D/A変換のチップを2基搭載して左右のプラス/マイナスを生成しバランス構成としていますが、上位機種のようにプラス/マイナス毎に1基、計4基搭載するほどの徹底振りではありませんので、基本的にアンバランス回路を内部でモノーラル化したような設計であるという見方もできます。ですから、下流が完全差動回路で完結していないならば、かならずしも無理にバランス出力に拘る必要はありません。


しかしNo.38Lのように、プリアンプの内部がバランス構成の場合、プリへの入力時点で余計なバランス化回路を介さぬよう、バランスケーブルを使用して接続するのが合理的です。


使用するバランスケーブルには、 ワイドでフラットな帯域バランスを維持しながら上位機種と見紛うばかりのノイズフロアの低さを実現する、 Synergistic ResearchのResolution Reference Mk2 Balanced Interconnect X-Seriesを使用します。

常時通電が基本で、電源のスイッチは存在しません。電源ケーブルを差して電源を投入後、スタンバイモードにする事は可能ですが、パワーアンプのGOLDMUND MIMESIS 28 EVOLUTIONにはスタンバイモードが存在しないこともあり、スタンバイモードは使用していません。


インレットが筐体底面にあるので、電源ケーブルはL型プラグで特注するか、足場そのものを持ち上げて差せるようにする必要があります。


天板からサイド、底板中央のインレット脇まですっぽり覆っている筐体のネジ止め部分にもなっている純正の足は、足の裏に硬いゴム素材が貼付けられているので、同社のCDトランスポートが大理石にセットされて音作りされていることに倣い、大理石のブロックによる足場が最適であると考えます。

高級ラックにはこの時期のMark LevinsonのプリやDACを意識して棚板を分割していたりする製品もありますが、総重量50kgとなる大理石の土台に匹敵するラックを探すのは至難の業でしょう。


別室に置いてあるDENKENのDA-7050HG(200V入力仕様)から、Synergistic Researchを模して片側をNAOK式銀コン仕様とした自作の電源ケーブルを介して、電力を供給しています。

入力端子はAES/EBUが2つあり、STリンク、TOS、RCA、BNCまで一通り揃っています。使用しない端子は設定で落とせますが、空き端子にはCARDASの端子保護キャップを装着する事で、若干S/Nが改善されるように感じます。


内部は、左右にアナログ出力基盤、中央前部に電源、中央後部にデジタル基盤という構成です。デジタル部と電源部は、アナログ回路と仕切られた上で、それぞれシールドボックスに収まっています。上位機種も構造的にはほとんど同じです。最上位機種などは徹底していて、電源部が別筐体になり、アナログL、アナログR、デジタル部の各セクションへの独立給電となっています。


筐体は一見、何の変哲も無いように見えますが、天板と両サイドから足回りインレット直前までが一枚で作られていて、筒状にカバーされています。ネジ止めはインシュレーターと共有されていて、天板と両サイドで受けた外部振動は全てインシュレーターを通して土台へと流れる構造になっています。

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