GOLDMUND MIMESIS 28 EVOLUTION

Goldmundは、スイスに本拠を置くハイエンド専業オーディオ機器メーカーです。

日本の輸入代理店Stellavox Japanではゴールドムンドと呼称されています。ただ、ドイツ語の発音ならばゴルトムントが近いとか。まあ、日本語での言い方なんて多かれ少なかれ元とは違うわけですが。ヤポンてなにさ。


プレーヤーからアンプ、スピーカー、ケーブルアクセサリーに至まで幅広く商品展開しているメーカーです。元々は買収されてから今のような形で再スタートしたようなものですし、目を付けた自社以外の製品の中身を使い、一部補強したり外装と電源を強化したりして商品価値を高めようという姿勢なので、必ずしも突出した特別な技術があるというわけではありません。


ユーザーになった人は「聴いて気に入ったから」というシンプルなきっかけが多いようです。そもそも技術力を売りにしているのではないのですから、当然といえば当然です。それでも、このメーカーが日本で一定のファンを獲得している理由は、その音が日本人の嗜好に合っているからでしょう。ハイエンドオーディオでは、どのメーカーにも少なからずそのような要素が売り上げに占めていたりしますから、単純に音が良いと多くの人に認められる製品を出すという力は過小評価出来るものではありません。広告戦略だけで売れるなら、いかにも技術力でどこにも負けないと謳うメーカーの方がよほど有利なはずですから。


他のAyreやDynaudioなどと同様、新製品になるほど普遍的な音へシフトしていく傾向があり、昔の製品のファンも根強くいます。特にアンプの型番が一桁の製品は神聖視すらされているようです。玄茶屋が聴いたことがあるのは所有している28EVOからですが、JOB2モジュールからJOB3モジュールにマイナーチェンジした際、若干線が太くなって低域が増すという傾向に必ずしも前面同調できず、バージョンアップを見送った経緯などもあり、一桁製品を好む嗜好は理解出来ます。


しかし逆に、プリアンプの27EVOでは、内部のモジュールだけA2からA20に交換されたタイプを聴いた時に非常に良くなったように感じました。A2物では、聴き手を突き放すような気品が少しばかり緊張感を強いていたのですが、A20物だと上品さを失わずに肌に馴染む柔らかさを感じました。まあ、だから手持ちのプリアンプを買い替えるかというと、そうは思わないわけですが。その辺りの選択に、嗜好がモロに出ている気がします。


何せ、D/Aの技術に定評のあるメーカーのCDトランスポートを選んでおきながら、同じメーカーのDACはトランスポートによって輪郭だけで中身スカスカになるからと言って違うメーカーにしたり、プリアンプは好きだがパワーアンプは嫌いで純正の組み合わせだともっと嫌いと言ってフルバランス伝送を売りにしているメーカーとシングルエンドしかないGoldmundを組み合わせてしまうような人間ですから。


こう書き連ねてみると、なにもこれほど徹底して真逆を行かなくてもいいような気もしますが、たとえ技術的に正しい回答はこうと言われても、その正しい回答とやらで出てくる音がアレなら、そんなものはタダでもいらんのです。


というように、良くも悪くも人によって趣味趣向の違いが非常にハッキリと出るメーカーと言えます。

 

SRライン、ハイエンドライン、アルティメイトラインというクラス分けされたラインナップ中、ハイエンドラインにあたるパワーアンプです。購入時の定価は1,030,000円(1,081,500円/税込)。現在は製造終了となっています。


SRラインはモジュール型の利点を生かした非常にコンパクトなモデルで、スマートなスタイルを提案したものです。それがハイエンドラインではかなり異なり、どでかい電源を積んでいることでサイズが大きくなり、重量も増しています。アルティメイトラインはその傾向を更に極端にさせたもので、電源も更に大規模に、外装のアルミや鉄板も分厚くなって、その重量は一人では持ち上げる事が困難なほどです。


このハイエンドラインのステレオパワーアンプは、ほぼ同型のモデルが発展してきていまして、MIMESIS 8〜MIMESIS 8.5〜MIMESIS 28 / 28 EVO〜MIMESIS 28 M / 28 MEと続いてきました。

ステレオパワーアンプ2台分の規模でモノラルパワーアンプも同様にモデルチェンジされていましたが、そちらはMIMESIS 8.2〜MIMESIS 28.4 / 28.4 EVOまでで一旦更新が止まり、しばらくしてステレオパワーアンプの半分の規模を片ch分とするMIMESIS 18.4 M/ 18.4 ME / 18.4 ME-D(DAC内蔵)になることでハイエンドラインにモノラルパワーアンプが再登場することになりました。


一旦ハイエンドラインのモノラルパワーアンプが消えた経緯は、関係者からの取材によると、モノラルパワーの28.4が良過ぎて本来上位機種のはずのステレオパワーの29が売れないためだということです。ステレオパワーアンプ好きとしては29を好むところですが、ハイエンドラインとアルティメイトラインでは音作りが異なり、アルティメイトラインではガチリと硬く締まった表現になりますから、28のほどほどに締まって芯のある表現にスケール感のみを追加したい場合など、確かに29よりも28.4の方がニーズは高いかもしれません。


そしてMIMESISシリーズからTELOSシリーズに変わってからは、ステレオパワーアンプはラインナップから消えました。ステレオパワーアンプ好きとしては残念な状態です。


28EVOの天板はメタクリレートパネルです。昔のモデルでは鉄板で、後のモデルではカーボンとメタクリレートの張り合わせです。


この個体にはJOB2モジュールが搭載されています。Goldmundの場合、モデルチェンジ直前のロットにはモデルチェンジ後のモジュールを載せる事があるようで、JOB3版の28EVOも存在します。JOB3へのアップグレードサービスもありましたから、比較的弾数は多いかもしれません。


基本的にJOB2版の28EVOにはスタンバイモードやアッテネーター、専用コネクタ、DACの内蔵とデジタル入力などは無く、仕様は初期の一桁ナンバーモデルとほぼ一緒です。正直、JOB3が正式に載ってからのME版やTELOSシリーズなどのモデルに搭載された端子類や多機能化の尽くは自分に取って不必要で、シンプルなこのモデルが気に入っています。

Goldmundのパワーアンプは非常に高い周波数までフラットに増幅するため、発振しやすい事で知られておりますが、歴代シリーズの中でも28EVOは何故か実際に発振するケースが非常に少ないモデルと聞きます。

バックパネルの大部分は、JOBモジュール冷却用のヒートシンクです。音量を上げると触れなくはない程度に熱くなりますが、無音時は季節にかかわらずほんのり温まるくらいなので、常時通電には支障ありません。無音時の消費電力も150W程度と、比較的低いです。後継機はスリープモードなどが搭載され、スリープモード時には100W程度に消費電力が抑えられています。


ただ、このアンプは、シンプルイズベストこそが信条なのではないかと勝手に思っているので、余計なものが追加されるのが果たして良いことなのか、甚だ疑問であります。


モジュール式により回路が小型であるため、面積・体積が小さい分、アンテナが小さければ受信し難いのが道理であるように、ノイズには物理的に強いと思われます。小型化は日本の専売特許ですが、小さい回路に巨大な電源部を合わせるという、ミスマッチとも思えるようなアンバランスな構成が、独特の音の出方に表れています。


Goldmundのバランス端子は無くても良いような代物のようです。一応説明書には、プロ用機器の為の600Ω受け用だと記載されています。それ以外の内部配線は、同社のLINEAL INTERCONNECTケーブル、LINEAL SP ケーブルと同じ線材が使われているようです。


内部の回路をモジュール化し、非常に小さくした事で物理的にノイズに対して有利な構造となっています。モジュールは背面ヒートシンク部分に取り付けられていて、ヒートシンクと筐体はインシュレーターで分離されているようです。構造から察すると、L/Rひとつずつモジュールがあるように見えます。この28EVOに使われているのはJOB2モジュールです。そして何故か、普段は全く見えない内部なのに金ピカのプレートがあります。

JOB2モデルと以降ナンバーモデルとの違いは、純粋にモジュールのみを入れ替えた個体を聴いたことが無いため断言できませんが、傾向的には低域が太くなり、普遍的なバランスへと変化している気がします。


筐体の大部分は電源トランスで、その電源部もボックスに入っており、筐体と一体化されています。このボックスにもプレートがあります。モノーラルアンプである18.4MEは、この電源部が28系とは最も異なり、単にトランスが左右分かれているだけではあるのですが、上位機種である29MEにおいて、筐体内であってもわざわざトランスを左右分割してBOX内に収めていることからすると、相応の利点があるものと思われます。ただし、18.4は小さいとはいえ、置き場に妥協すれば、音場の広さというモノーラルアンプの利点が、中央を付近で左右が大きくズレてしまうという欠点に化けてしまうでしょう。


ただ、音が気に入って欲しいと思ったアンプが常にステレオアンプであるとは限りませんし、実際にモノーラルアンプを使う上で色々なノウハウがあると思います。自分自身それなりにアイデアもあったりしますので、もしかして将来機材が入れ替わる事があったりしたならば、前述の欠点が出ないよう工夫をしている事でしょう。いずれにせよ、電源も含め相応の覚悟が必要なのは確かだと思います。


2008年9月1日から、MIMESISシリーズ向けにバージョンアップサービスが始まりました。内容は、電源フィルター(AC Curator)の追加と数点のパーツ交換、更にMEモデルのみバランス入力基盤の取り付け(オプション)と、オーバーホール。料金は税込み168,000円。(現在は代理店も変更しており、サービスの有無と料金の詳細は分かりません。)

広い空間に明快に音像が浮かび上がるため音の出方が立体的で、明暗のハッキリしたコントラストの高い描写をします。


低音は膨らまず引き締まったタイプです。印象を表現するための言葉としての駆動力というものを、低音の量感として捉えた場合、駆動力が無いというイメージを持つかもしれません。しかし、駆動力というものを低域の明瞭さや音階の明確さとして捉えている場合、駆動力は高いと言えます。


Goldmund特有の音色はほんの僅かに感じられるだけで、固有の音色を主張し過ぎずパワーアンプの音色を引き立てるタイプのプリアンプを使っていなければ、あっさりかき消されてしまう程度です。


全域でカッチリとした芯を感じさせる音の出方ですので、多少ふくよかなタイプのプリと相性が良く感じます。


王道は純正の組み合わせなのでしょうが、自分としては純正の組み合わせ、特にこのモデルと同時期のA2版のMimesis 27 Evolutionだと高貴過ぎる気品が近寄り難さを感じてしまうので、どうしても純正ペアということであればふわりとした白雪の色香を持つA20版の27EVOを推します。


しかしマイ・ベストはMark LevinsonのNo.38Lです。上位機種のNo.38SLでも後継機のNo.380L / SLでもなく、もちろん 旧Mark Levinsonブランドの臭いを残す26シリーズでもなく、 No.38Lです。CD再生を主眼に置き、Mark Levinson氏の抜けた第二期Mark Levinsonブランドとして革新的な変化を遂げた第二のブランド初期モデルは、普遍化してしまった上位機種や後継機では味わえない明確な方向性を感じさせます。Wilson AudioのSYSTEM X以外まともに鳴らないMark Levinson純正ペアの評価に隠れてしまいがちですが、GOLDMUNDのシンプル・イズ・ベスト志向を極めた一桁モデルの後継たる28EVOのほのかな色気を感じさせる空間と芯のある音像描写の対比、事実上のMark Levinsonブランド第二期初号機No.38Lの端正な音色と開放的でふくよかな低域の組み合わせは、一つの時代の象徴に相応しい品格と何処まで追い求めても底の尽きない深みを感じさせます。

比較的鳴らし易いと言われている Confidence C2を鳴らしています。中途半端に鳴らせていない場合に起こる、部屋の悪影響と勘違いしやすい中低域での飽和感を出したりする事無く、滑らかな質感を聴かせてくれています。なお、鳴らし難いと評判のConfidence5でもDynaudioを推している事で有名な吉田苑によると、100V仕様の28EVOで充分鳴らせるらしいですから、不足はないでしょう。


入力はアンバランスを使用します。バランス端子も付いてはいますが、内部を見みましてもRCA端子から分岐させてとりあえずXLRを付けただけというものですから、使わない方が良いでしょう。


ケーブルはTransparentのRSEを使用します。空間の透明度の高さと低域の解像度の高さがGoldmundの音作りを生かしてくれます。Transparentはケーブルについている箱の部分で100kHz以上の信号成分をカットしているらしく、万が一上流から不意に大量のノイズが流れ込むような場合があっても安心できます。Goldmundの広帯域設計は増幅時の位相特性を理想的な状態に近付けるためのものと謳われているので、100kHz以上を手前でカットしてもその動作そのものの利点は失われないと思います。ちなみに、純正であるリニアルにもケーブルにBOXが付いていますが、もしかしたら同様の処理をしているのかもしれません。


電源ケーブルは、このアンプの音作りを生かすことを重視するならば、MITのZ CORD III(Oracle Z3)という選択が手堅いです。基本的に、なるべくパワー用に設計された大電流対応のケーブルを選択するのが好ましいのは言うまでもありませんが、Z CORD IIIの彫りの深い空間表現は、モジュール式に共通する立体感のある音像と空間の対比を一層際立たせます。立体感を損なわずに低域を若干ファットにする方向も、補完的相性の良さを感じさせます。


優等生的理想としては、以前muimui氏に借りて聴いたSynergistic Research Absolute Reference A/C Master Coupler X2が最良だと考えています。芯の強い音像描写と広大な音場、そして膨張感の無いフラットな低域の伸びは、個性による味付けの好みを超える真っ当な魅力がありました。アクティブシールドによる空間の深さはZ CORD IIIとは異なる個性ですが、能力的には優位性を感じます。


挑戦的選択をするならば、Synergistic Research Designer’s Reference SQUARED Master Couplerが一つの頂点でしょう。Synergistic Researchはモデルチェンジ毎に普遍的な性能の向上を果たしているケーブルメーカーですが、反面、個性は減退しています。奔放で開放的な洪水の如き情報量と余裕で深くまで伸びる低域、何よりも鮮やかな色彩感は、他では得られない麻薬的な魅力を放ちます。


設置場所は、スパイクが筐体に直結されており、足回りが非常に敏感ですので注意が必要です。石や金属製のスパイク受け、木材等を合わせて使って上手く誤魔化すか、共振がよくコントロールされた聴感上癖の出難い物の上に置かないと、まず間違いなく音色や音場が濁る事になり、元々僅かしかない色気を阻害してしまいます。その点、Music ToolsのISOstatic Floorampは、40kgの重量でも反る事の無い厚さの異なる3層の強化ガラス板が共振周波数を可聴帯域外に追いやることで、28EVOの濁りの無い空間表現を更に生かします。


SPケーブル用の端子は小さく、手締めでは充分な固定が出来ないので、12mm径のソケットレンチを使って適度に締め付けます。締め過ぎはケーブルの端末を歪めてしまったり、下手をすると端子を壊してしまいますので、注意が必要です。

200V仕様への変更は、輸入元のStellavox Japanに依頼しました。手数料は税込み12,600円でした。


GOLDMUNDのパワーアンプは、頻繁に細部の仕様が変更されていますが、電源周りも例外ではないようです。28MEの内部では、簡単に取り外せるPCの基盤電源用にも似た樹脂製のコネクターを、100Vと書いてある下のソケットから、隣の200Vと書いてある下のソケットに付け替えるだけで電源仕様の変更が可能となっていました。しかし、JOB2物の28EVOでは、半田付けされたショートワイヤーを付け直さないといけないようです。


その他の変更点としては、電源仕様とは関係ないと思いますが、どうやら内部配線の引き回しにも手が加えられたようです。トランスからJOBサーキットへの配線において、スピーカー端子への配線と、RCA端子からの配線と同様に被せられていたメッシュスリーブが取り払われています。その代わり(?)に、ケーブルそのものが切り詰められて最短距離で繋がれているようにも見えます。18.4MEで謳われている、電源経路短縮の改良を施してくれた・・・・・というのは、都合の良すぎる解釈でしょうか?ともあれ、見た目だけでも1/3程度切り詰められて短縮されているようです。確認してもらったところ、本来メンテ用に長めに配線されていた物だが、もう必要無いので短くしたとの答えでした。できればメッシュスリーブは付けておいて欲しい気がしましたが、元々緩いメッシュですし、それほど影響は無いかもしれません。それよりも、素直に最短化された事を喜ぶ事にしました。


音質の改善は著しく、Fレンジの拡大と共に空間も全方位拡大しました。低域方向の限界で鈍り始めていた領域の解像度も改善しました。3次元的に広く展開する立体的な音像描写は、まるでワンクラス上のアンプのようです。

このモデル以降、最終的に28MEの定価は税込み1,554,000円になり、税込み1,081,500円だった28EVOの頃から比べると、JOBサーキットの世代交代による性能向上を差し引いても、C/Pは低くなったと思えてしまうのですが、200V化した28EVOであれば、仮に以前の定価が現在の定価と同じだとしても、充分納得できます。

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